迷いの末に。
今日は震災をテーマにした連載漫画
「私たちの震災物語/ハート再生ワーカーズ」が掲載されている、
集英社YOUが発売される日です。
そもそも、この漫画は
災害支援しているNPOの活動レポートを
1話完結の読み切りで描くつもりでした。
しかし、いざNPO5団体の活動を取材してみると
各団体が濃くて、熱くて、とても1話にまとめられない!ということで
3回の短期シリーズに。
そして7月から始めようと準備を進めていた、
子どもの病気をテーマにした体験談漫画の連載枠があったので
その後、子どもの病気をテーマにした漫画の連載を先送りにして
「ハート再生ワーカーズ」連載が決定しました。
しかし、前回、
1回目の「赤ちゃん一時避難プロジェクト」を描いてみたら
震災について描くのであれば
支援者のストーリーだけではなく、
被災者のストーリーも描かなくては片手落ちなのではないか?と
考えるように・・・。
うっかり漫画家になって、十数年。
自分の生活ばかり描いてきて
「エッセイ漫画家」と呼ばれていた私。
でも、今回ばかりは自分のことではあっても、
「被災の事は描かない!」と心に決めていたのです。
震災後、「井上さんの被災体験を漫画に」という
オファーもお断りしてきました。
正直なところ、「描かない」のではなく
「描けない」と思ったからです。
でも漫画家の私ができることは「描いて、伝えること」だけ。
偶然「被災地」と呼ばれる仙台に住んでいて
「被災者」となった私にできることは
やはり「描いて、伝えること」だけだと、思い至ったのです。
ずいぶん迷った末、
描かせてもらうことにしたのが今回の被災体験。
津波で大きな被害を受け、
地盤沈下や汚臭問題が深刻化している宮城県石巻市にある、
「石ノ森萬画館」のスタッフ・Oさんの壮絶な被災体験談です。
描きながら、私自身も辛い気持ちになることがしばしばありましたが
今は、描かせてもらって良かったと思っています。
これが今回描かせて頂いた、石ノ森萬画館の正面玄関。
震災後約3カ月。
ボランティアさん達の働きで、ここまでキレイに整備されました。
3月11日は津波により萬画館の1階が天井付近まで浸水。
正面スロープの「石ノ森萬画館」の「萬」の字が
水の勢いで、はぎ取られ、流されています。
当日、Oさんは、この建物の中で
たった一人で津波と闘っていました。
萬画館がある、北上川の河口付近の中州は
殆どの建物が津波によって流され、
今も瓦礫が残されたままです。
中州の河口側は地盤沈下により、時間によって一部が浸水しています。
萬画館から車で2〜3分の距離にある石巻市中心部の商店街も
まだこんな風に津波の傷跡が残ったまま・・・・。
たった15ページの漫画では
すべてを描き切ることはできなかったけれど
新聞やテレビのニュースでは伝えられない、
体験者さん達の感情を伝えることができたら・・・
と思って描きました。
是非、多くの方々に読んで頂きたいと思っています。
同じく本日15日に発売の
竹書房「すくパラ」連載中の「孫育!(マゴイク)」でも、
今回は被災したおばあちゃんの孫育てについて
取材させてもらったものを描いています。
こちらは見本誌がまだ届いていないので
後日紹介させてもらいます。
現在は、来月発売する単行本、
「もっとオンナの病気をお話ししましょ。」の書き下ろし原稿と
「ハート再生ワーカーズ」の3話目を制作中。
「描いて、伝える」という、漫画家である私の勤めに徹して
この連載中、頑張っていきたいと思っています。
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