2011年6月15日 (水)

迷いの末に。

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今日は震災をテーマにした連載漫画
たちの震災物語/ハート再生ワーカーズ」が掲載されている、
集英社YOUが発売される日です。


そもそも、この漫画は
災害支援しているNPOの活動レポートを
1話完結の読み切りで描くつもりでした。
しかし、いざNPO5団体の活動を取材してみると
各団体が濃くて、熱くて、とても1話にまとめられない!ということで
3回の短期シリーズに。
そして7月から始めようと準備を進めていた、
子どもの病気をテーマにした体験談漫画の連載枠があったので
その後、子どもの病気をテーマにした漫画の連載を先送りにして
ハート再生ワーカーズ」連載が決定しました。


しかし、前回、
1回目の「赤ちゃん一時避難プロジェクト」を描いてみたら
震災について描くのであれば
支援者のストーリーだけではなく、
被災者のストーリーも描かなくては片手落ちなのではないか?と
考えるように・・・。
うっかり漫画家になって、十数年。
自分の生活ばかり描いてきて
「エッセイ漫画家」と呼ばれていた私。
でも、今回ばかりは自分のことではあっても、
「被災の事は描かない!」と心に決めていたのです。
震災後、「井上さんの被災体験を漫画に」という
オファーもお断りしてきました。
正直なところ、「描かない」のではなく
「描けない」と思ったからです。


でも漫画家の私ができることは「描いて、伝えること」だけ。
偶然「被災地」と呼ばれる仙台に住んでいて
「被災者」となった私にできることは
やはり「描いて、伝えること」だけだと、思い至ったのです。

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ずいぶん迷った末、
描かせてもらうことにしたのが今回の被災体験。
津波で大きな被害を受け、
地盤沈下や汚臭問題が深刻化している宮城県石巻市にある、
「石ノ森萬画館」のスタッフ・Oさんの壮絶な被災体験談です。
描きながら、私自身も辛い気持ちになることがしばしばありましたが
今は、描かせてもらって良かったと思っています。

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これが今回描かせて頂いた、石ノ森萬画館の正面玄関。
震災後約3カ月。
ボランティアさん達の働きで、ここまでキレイに整備されました。
3月11日は津波により萬画館の1階が天井付近まで浸水。
正面スロープの「石ノ森萬画館」の「萬」の字が
水の勢いで、はぎ取られ、流されています。
当日、Oさんは、この建物の中で
たった一人で津波と闘っていました。

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萬画館がある、北上川の河口付近の中州は
殆どの建物が津波によって流され、
今も瓦礫が残されたままです。
中州の河口側は地盤沈下により、時間によって一部が浸水しています。

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萬画館から車で2〜3分の距離にある石巻市中心部の商店街も
まだこんな風に津波の傷跡が残ったまま・・・・。


たった15ページの漫画では
すべてを描き切ることはできなかったけれど
新聞やテレビのニュースでは伝えられない、
体験者さん達の感情を伝えることができたら・・・
と思って描きました。
是非、多くの方々に読んで頂きたいと思っています。


同じく本日15日に発売の
竹書房「すくパラ」連載中の「孫育!(マゴイク)」でも、
今回は被災したおばあちゃんの孫育てについて
取材させてもらったものを描いています。
こちらは見本誌がまだ届いていないので
後日紹介させてもらいます。


現在は、来月発売する単行本、
もっとオンナの病気をお話ししましょ。」の書き下ろし原稿と
ハート再生ワーカーズ」の3話目を制作中。
「描いて、伝える」という、漫画家である私の勤めに徹して
この連載中、頑張っていきたいと思っています。









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